職人の住む町
HOME 名工会の主旨 名工会の概要 職人の町一覧 職人技市 日本の技博物館 応援団 検索

指の動きに飛鳥の調べ、組紐は華麗な音のデザイン・・。

川勝親方の指は優雅にしなやかに、あるときは力強くピアニストのように動く。 熟達した名人の技とは、見ていて常に無駄がない。素晴らしい親方の指の動きも同じである。それは不思議に簡単そう に見えてしまう。
伝統的な日本の組紐は、他の職種と同様、近隣国の安い製品に駆逐されかけている、 というのが現状である。かつて組紐を買い求めた人に聞けば、長い間、愛着を持って職人さんのものを使っていると言う。使えば品質の良さが分かるから、との事であった。やはり多くの人に使ってもらい、その良さを知ってもらいたいと思う。 昔は旺盛な需要もあり、作る傍から業者が持っていったそうだが、最近はなかなか組紐も売れない。 和装する機会が減ったことも大きいが、日本文化の素晴らしさに触れる機会、それ自体がないからである。 島国ゆえに昇華して来た独自の伝統技術であり、シルクロードの最終地としての歴史から今日に至るまで、日本的な繊細さを加えて伝承してきた。組紐は「飛鳥の時代から今日まで、道具も組み方も変わっていない」。 美しいだけではなく、良いものだからこそ伝え残されてきた私たちの宝である。

  家業が組紐であり、子供の頃から日常的に接していました。将来は職人になると覚悟し、疑うことは全く無かったようです。どうも嫌いではなかったのです。祖父の頃は銀座に近い日本橋で工場とお店をやっていました。疎開をする形で埼玉に移り住んだわけで、私はこの土地で生まれています。子供の頃、家の作業場には高台が何台も並び、職人さんが紐を組んでいました。今でもこの頃の台が倉庫に残っています。勿論私が使っている高台も当時のものです。修行ですが、本格的にやると決まっても、まずは門前の小僧でさしたる苦労はしません。
感覚を養う意味からお花の修行をし、師範となって教えたこともありますし、自分で組んだ特殊な紐と花とを一緒にいけるといったような事も挑戦しました。 そうしてそれなりの美意識は高めたつもりですが結局、昔の基本となる柄や組み方に集約されていきます。 私たちのキャリアがどうであろうと、太刀打ちできない歴史と実績がこれらの紐にあります。 創作的な組み紐、過去の私が行った挑戦なども含め思うのは、やはり組紐は主役ではなく、着物と帯を引き立てるもので、それを引き締める品のよさこそが大切です。昔からの組紐であること自体が無難と言うかやはりそれが素晴らしいことだと思います。
  組み技の解明と美的なバランスをとることが難しいです。特徴としては先ほどお話ししましたが、歴史のある編み方を好む所もありますから材質は正絹です。化学繊維は古くなるとどこかが黒ずんできます。本物を知らない人の多くは、「たかが紐」と思うかも知りませんがそれは違います。先ほども言いましたが飛鳥時代から残って来た手法とは、それなりにが違うのです。是非、本格的な紐を使ってみてください。
 
   
 
  やはり、組始める時の姿勢を語る前に、組紐作りの難度になってしまいますが、これが毎日が変わります。常に喜んで頂けるように、より良い紐を心がけて組んではいますが、環境や自身の心の状態や体調など、それら全てが紐に現れます。紐自体に対する環境だけ考えても、温度、湿気などが大きく影響します。そうしますと微妙に組む加減が変わってきます。例えば、一本の紐を組む場合、急いで一日半で仕上げるとします。すると、それだけでそれに応じてその時々で状況が違い、同じ様にはできません。ひたすら編み目を数え続けていく事もあります。集中力が必要です。「仕事や作業として心がける」ということだけではなく、大切な事は良い紐を作ると言う意識であり、これは長い間の積重ねで自然に身に付くことです。全てを通して、常に同じ結果を引き出せるバランス感が必要です。もっとも組紐だけではなく全ての職人も同じであろうと思います。
  本物の組紐を身に付けて頂けると良さがわかってもらえ、そういう期待も出来るのですが、今の日本文化への風潮では、理解して頂けるには程遠いです。営業などの余計な苦労も必要となり、こんな状態では弟子を取れません。職人仲間を見ても複雑な心境になり、何百年と続いた文化が消えていっています。どの職人でも常に目標としたのが“一人前”ですが、これが全く巷では聞けなくなって淋しいものです。デパート等でお客さんと接すると、自分自身を育てていないと言う事も痛切に感じます。 正直な話、飛鳥からの組紐文化を理解して頂ける人は価値をわかって頂ける人なのでホッとします。このまま文化を壊していけば、未来の子供達に何とお詫びしていいのかわかりません。

 

職人名 川勝新市(かわかつ しんいち) 
雅号又は銘  
生年月日 昭和25年2月12日
職種 組紐
歴史 飛鳥時代に隣国より伝来
作品  
技数(積)
次代、素人から始めて手伝えるような状態になるまでの期間
10年ぐらいはほしい。
技の種類や工程
1.染色
2.経尺(へいじゃく)
帯締め一本分の長さにそろえる。
この段階で縒りを加えたり、染色をするものもある。

3.玉付け
玉( おもり )に糸を巻きつけ組台にセットする。

4.組み
作業は紐を組んでいく形で行う。編むと言う作業とは異なる。

組台は色々とあるが頻繁に使う台となれば5〜6種類である。
編み方の種類は何種あると言ったものではなく無限に
組み合わせる事が可能となる。

5.房付け
紐の端をほどき、別糸を加え房を豪華に見せる。

6.ゆのし
房部の癖を、水蒸気を当てて伸ばす。そして仕上げである。
 
現在の立場(役)  
   


Copyright (C) 2002 WAZA All Rights Reserved.