職人の住む町
HOME 名工会の主旨 名工会の概要 職人の町一覧 職人技市 日本の技博物館 応援団 検索

東京銀器の代表とも言える産業美術系職人である。
茶釜もやかんも驚く程のハイグレードな美しさで、何故か色気を漂わせる理屈抜の鍛金の代表格。作品は一枚の板を打って形を作り、独自の技術でさらに打ち出され整然と並ぶ霰(細かい凸起部)は技術的にも驚嘆に値する。
名工の名をほしいままにした父に、石黒氏は師事し腕を磨いた。父の時代とは多少技術的には違うが、昔ながらの技は父に及ばないと言う。父から継承した完璧を追求する姿勢はぐい飲みなど安価な物の技にも現れる。内側の打目を滑らかにする為に二重にしている。しかし最近では手作りの良さを出す為に、打ち目を少し残しておいたほうが良いのかもと語る。現在の石黒さんの作品には打ち目すら感じない磨きがかかり、完璧な仕上がりとなっている。こうした技術を使って工芸展の作品を作るとなると、金工は、他の職種と違い作品ひとつひとつに時間がかかり、何ヶ月もかかりっきりになる関係から当然仕事も出来ず、又、何度かやり直しをして良い物をと言った他の職種のような事もまったく出来ない。従って始めたものが常に決定作品となる。作品を作る職人の苦労は大変であると思える。
昔は作る先から売れてしまう時代があったが、遥かな夢となりましたと結んだ。石黒氏の作品は業界全体に影響を与えている。

■ 歴史
江戸時代に多彩な技術、技法が確立された。


  父に師事、銀器の繁栄は戦後と聞くが、その時代は横浜などの米軍が買っていくとのことで品物を持って桜木町に着くと店に持っていくより前に仲買の業者が駅で待っていてそこで持っていってしまうとのことでした。
当時は400社ぐらいあってそれは華やかであったと聞きます。そのお金を持って遊びに行ってしまう職人もいて今とは全く違っていたそうです。
私は小学校の頃から手伝っていました。私が中学の時、父が大映の永田ラッパと言われていた有名な社長がいましたが、その社長に金製の進軍ラッパをたのまれて作りました。翌日納期といった日、置いておいた上の荷物が崩れ完全に潰れてしまいました。父は黙々と寝ずにそれを元に再現しました。まったく奇跡といえるものでした。今の人であれば少し納期をずらして等考えますが昔の人は何も言わず当然の如くやり遂げると言うことの凄さが今の私の心に残っています。父は超と付く程の名人でした。
現在私の作品も父と同様の姿勢で作業に向かっています。修理品を戻す技術は作業的にどこから手を付けていくのかの判断で大きく腕が問われます。すなわち修理ができると言う事は全ての技術を修得していることでもあります。この事件は子供ながら父が大きく見えた大変な事件でした。
  今は茶器などは少なくなりました。作る時の形の美しさと品格に大変気を使いながら作っています。特徴と言うよりお客様に喜んで頂いているところは、作品のバランスです。また霰に興味があるとか色気がある等もよく言われます。
 
  父がよく言っていました。壁にぶつかったらそこで意地になって固執せず、元に戻って始めからやる気持ちが大切と言っていました。又、鍛金は商業美術の世界にも足を踏み入れていますから自己満足な自分表現に溺れた作家意識を持ってはいけないなどと考えています。
  ともかく基本です。その上に立って工夫があります。
創作もここまで来てからやらなければ、どこかの作家と同じになります。誇り高き職人を徹底して追い続けなければ、日本全国、単に習った技術だけのクラフトマン的かつ作家風を吹かすエセ職人ばかりになってしまいます。

 

職人名 石黒昭雄(いしぐろ・あきお)
雅号又は銘 光南
生年月日 昭和17年4月2日
職種(種) 鍛金
作品(アイテム)  
技数(積)
弟子入りしてから手伝えるような状態になるまでの期間
盃程度で5年ぐらいと思いますが、これは人によって違います。感覚や持って生まれた能力などで異なります。いくらやっても駄目な人はいます。
全てをマスターするには10年以上かかります。
技術だけ覚えたからと言って出来るもでもありません。きっちりとたたみ込んで覚えていく事が結局大切です。作る種類によって同じ物でもその技術の全てが変わってきます。
修理などもあり、全てに通じていなければ職人ではなくその人は作家しか道はありません。又、産業美術工芸の分野にまで広がっていきます。しかも一つを完成させる時間も他の職種と比べ製作日数がかかり、失敗したからといってやり直しが効かない等時間手間がかかります。又、鍛金や彫金は需要が少ない狭い世界ですから技術を学ぶだけで職人として通用するという程甘い世界ではありません。
技の種類や工程
金属工芸の粋と言われてきた東京銀器に区分されますがここでの技術は大きく分けて3種に分かれます。私が行う鎚で平らな銀板を打ち出して立体的なものにしていく鍛金、そして文様をタガネで彫る彫金、絵柄の部分を切り抜き赤銅、四分一など別の金属を嵌め込む切嵌(きりはめ)などがあります。
素材の銀は90%以上のものが使われる大変高価なものです。金などで行う場合もあります。鍛金の技術は地金取りから始めます。なまし、鎚しぼり、ヘラしぼり、模様打、彫金、切嵌、ロウ付け、仕上げなどの順に必要な工程を行います。その都度仕上げによっても作業は変わってきます。
現在の立場(役) 生涯現役
次代 他  


Copyright (C) 2002 WAZA All Rights Reserved.