職人の住む町
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昔からの作り方で一貫して作っている職人は非常に少ない。又、筆を使う文化が衰退している今日、一般的には、筆、硯、墨、和紙などについて ほとんど理解されていないといっていい。筆の職人からよく聞く話だが、性質の違う筆を入手し、あの筆屋はだめだと分った風な人も結構いるらしい。筆を売る一般の店のみならず、全ての職種について言える事だが、昨今の店のアドバイスについても信用出来なくなってきている。名工会とは関係無いが、話しのついでに言ってしまえば、特に大型電気店の店員の商品知識の無さには呆れることが多い。アドバイスを鵜呑みにして買ったら有るはずの機能が無かったりする。そういった現状で、親方の 本物の筆をきちんと説明出来る店も少ない。
現在、全国の8割以上が中国産である。10万円台のものまでが中心部にナイロン製の人工毛を使っている場合もある。どうせ素人には分らないからと言う事だろうが、騙しはやがて自分の首を絞める事になる。大量産地が自分だけ儲ければといった発想から中国に教えて始まったものだが、ついに100円ショップにも出回ることとなり、日本の産地は自業自得というか、それでなくてもきつい今日、廃業が続出している。
又、活路を変え 化粧筆等を作ったりしている。日本職人名工会に参加している職人は、こうした中、自信と誇りを持ってものづくりを続けて来た職人達である。良い筆は製作側の姿勢で決まるようである。練習用から始まって、上達と共に筆のグレードも上げていくアドバイスをしており、確かなおつき合いの出来る職人である。結局その筆を使いこなすことで書きやすくなり、高価な筆だから上手く書けるといったものでもない。もちろん適した筆はあるので取りあえず、本物の職人からアドバイスを受けて、正しい筆選びから始まると思う。間違った選び方をされると職人の信用にも関わるし互いに納得することが大切である。
残念ながら時間の関係でサイト上では数名の紹介にとどまっているが、本物の職人は順次掲載していきたい。日本の基本的な職人文化のひとつである。

  私は物を作るのが子供の時から好きでした。始めは料理の仕事をしました。実の兄貴は専門家用の工業筆の職人でしたが、 事情が出来て弟子入りした訳です。
習字用や文字用の筆ではなく蒔絵や面相筆などで、駄目な物ではその仕事自体が成り立たない世界です。従って非常に多くの物を教わりました。
  今の時代、質の良い毛を集めていくのが難しくなっています。日本の動物もいなくなって馬の毛一つにしても中々手に入らない。理想は大きな日本の農耕馬(駒馬とも言っている。)であるが、毛質が素晴しい。
それと筆作りの難しさは、使う目的によって正反対の筆質が要求される為、買う側もしっかりとした考えがない場合は筆屋にまかせた方がいいですね。結局筆屋との関係は使ってみなければ分らない訳ですから何をどうしたいのかを知らせて欲しいです。筆作りは難しい反面、楽しいものです。色々使っては悩んでいる人の求める形を特注で作ります。作っているうちから、鼻をあかしてやるつもりだから、うまくいって“ざまあみろ”と言った感じかな。楽しいよ。
それと金を生み出す工業筆と月謝を払って習いに行く半紙用の筆、かなと漢字、作品によっても違います。絵師や書家が作品を書く時の筆も皆違います。毛の量、筆形、筆圧、かすれ、材質、動物の雄雌、そしてどの部分の毛なのかといった毛質など、全て目的によって変えて行きます。
ベテランの江戸筆の職人は、勝負する時の毛はストックとして 必ず箪笥貯金をしています。この毛は筆職人自身がここぞといった時にしか使いません。止め、跳ね、払い、三つの基本の表現が違います。
初めての人、ベテラン、作家、書家、使う側と作る側が一つになって筆の味も質も分るものですから、レベルの違う高望みの筆はお断りし、その人の時点で最も適した最高の筆を紹介しています。
 
  材質に妥協するな。これは親方の口癖でもあった。私もそうしています。納得して楽しく良い気分で作ることで、全ての姿勢に通じてきます。
  江戸筆は、根元まで下ろして使います。これは大きな特徴で筆がしっかりしていないと出来ません。それと江戸筆は全ての工程を一人の人間が一貫して責任を持って作ります。良い筆を作るには分業では出来ません。

 

職人名 佐久間末男(さくま すえお)
雅号又は銘  
生年月日 昭和17年3月18日
職種(種) 江戸筆
作品(アイテム)
技数(積)
次代、素人から始めて手伝えるような状態になるまでの期間
人によって異なる。技に関係ない仕事もある。
技の種類や工程
大雑把に分けて30工程
選別、毛抜き、煮沸、綿毛抜き、火のし、籾殻灰、毛揉み、ここまでが汚れてきつい仕事で下ごしらえとなります。特に良い毛を選定する為には動物の毛皮から毛をむしるので夏場は大変な仕事です。次に筆の組み立てでが、20工程ほどあり、最後は筆の善し悪しを決定付ける上毛掛けです。今まで組み合わせて来た筆の書き味と美しさを決定する最後の工程なので特に神経を使います。
作業中の工程で手を抜いてはいけないところは、使えない毛を何処までさらい出して捨てていくかです。ごまかすと割れる、抜ける、など色々な問題が出て来ます。結局のところ善し悪しは筆職人の気構えであり、内容は作り手しか分りません。使い手は使ってみて初めて分ると言うことです。
現在の立場(役) 生涯現役
次代 他  
   


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