大正生まれの現役の鋏鍛冶職人。現在もより良い鋏の工夫をしている。口だけではなく様々な実用新案や特許を持っている。お邪魔させて頂いた時、何を頼まれても常に考え続けていると奥さんが言っていた。考え続ける事がもの作りとして最も大切な事と言う。
ひらめきはこれ無しにあり得ないと親方は言った。特に大切な事は切れ味と使いやすさである。特殊な一部の鋏と剪定鋏以外の卸しはしない。外に出せば最高水準の鋏にランクされる物と考える。口コミだけで販売し、どこにいっても買えない鋏である。木鋏と金切り鋏を作っている。
使ってみたが太い木が何の抵抗もなくスパット簡単に切れる。特殊な鋏で、厨房などに使われるステンレスを曲げて4枚重ねた板が簡単にきれる。曲線をきる金切り鋏は今迄見た事もない形をしていた。親方が考えたオリジナルで実用新案である。全く無理なく左右の波線が紙をきるように切断されていく。植木屋の職人が腱鞘炎で手が動かなくなったとき、親方の鋏に変えてぴたっと治ってしまったという。若い頃はへら鮒釣りに興じて家庭そっちのけ、釣りをしながら鋏の事を考えるのが一番よかったと言う。今でこそ釣りは辞めたが考え続けることはやめない挑戦する江戸の鋏職人である。
息子さんもこの道30数年、二人で“野崎の鋏”を育てている。 |